■ 住まいの本質

 
 
  ■ 体感温度

    熱の輻射エネルギー
   同じ室温の住宅でも、寒さを感じる住宅、暑さを感じる住宅、寒さも暑さも感じない住宅が
   あります。
   これには、熱の輻射伝播(熱容量)と空気中の水分(湿度)の要素が影響しています。       
   熱の輻射伝播とは、地球と太陽が空気を介さず熱エネルギーのやり取りをする原理です。

   人体も同じように、空気を介さずに周りの物体(壁、窓、天井、床など)と熱エネルギーの
   やり取りをしています。このやり取りの熱収支のバランスによって寒く感じたり、暑く感じ
   たりするのです。

   つまり、室温が高(低)くても寒さ(暑さ)を感じる住宅は、室温より周囲の物体の温度の
   方が低(高)いからです。(※外断熱における熱容量は、この原理を利用します。) 

   熱エネルギーの輻射伝播は、熱線(光とほぼ同じ性質)として作用します。
   人体は、余った熱エネルギーを周りに向けて放出していますが、熱線の輻射伝播は、空気中
   の水分が多いほど乱反射、屈折が起きるため、熱移動の速度が遅くなったり自分に反射して
   きたりします。つまり、湿度が高いほど体感温度が高く感じるのはこのためです。

   例えば、晴天の暑い日中に日陰に入ると涼しく感じるのは、その部分の地表面から放射され
   る輻射熱が僅かに小さいためです。

   例えば、晴天の寒い中に日陰から日当たりに出ると暖かく感じるのも同じ原理です。この時、
   地表面が雪で覆われている場合は、雪が地表面の断熱層として機能するため、地表からの輻
   射熱はほとんどありません。それでも少し暖かく感じるのは、太陽の日射が雪に反射して倍
   増するからです。

   太陽を暖冷房器、地表面を壁あるいは構造体、雪を断熱層と仮定して住宅をイメージしてみ
   てください。同じ原理です。


    黒球温度
   体感温度に近い数値を表すには、黒球温度計を使用します。
   この温度計は、物体から放射している輻射熱エネルギーを温度に換算できる温度計です。

   極端な例で言えば、外気温が−20℃、室温が+10℃、周りの壁、床、天井等の黒球温度
   が+25℃の空間があると仮定します。
   この空間で寒さを感じるでしょうか? 答えは多分、快適な空間だと思います。

   断熱、気密、換気が十分に配慮されている住宅の「快適な室温」 を 「体感温度」と比較す
   ると、快適な室温は、外気温が低い冬期では、体感温度より低い数値になり、外気温が高い
   夏期では逆に、体感温度より高い数値になります。